「庄内に生まれて本当によかった」と、子どもたちに伝えていきたい!
料理人ではなく、農家だからこそできる地産地消!|やさいの荘の家庭料理 菜ぁ

2021.02.15

前回に引き続き、グリーンツーリズム特集ということで、農家民宿・ゲストハウス・レストラン・農園・カフェと庄内で幅広くグリーンツーリズムをまるっと展開する「やさいの荘の家庭料理 菜ぁ」の店主である小野寺 紀允さんにお話を伺ってきました。

その日の献立は畑に聞いてみてから―

料理を決めてから食材を集めるのではなく、その日の状態の良い旬な食材をみてから料理を決めるというやさいの荘の家庭料理 菜ぁ。
畑の旬の野菜の素材のよさを活かす農家だからこそできる生産から調理・提供までを行うことができることが強みとしてます。地元庄内の食材をほぼ100%使用している無農薬・無添加の農家レストランです。

人のお家かと思い、一見すると少し入りづらいようなお店の中へ入ると、広々とした古民家の大広間を中心に椅子席・お座敷とテーブル席が。
窓の外にはのどかな風景が広がっております。

この日は平日のお昼どきでしたが、スーツ姿のサラリーマンや、若い女性たちが4,5組店内におり賑わっておりました。

お店のメニューは、メイン1品にその日の旬な野菜を取り入れた小鉢3品と漬物・ご飯・みそ汁という940円のランチメニュー。農家だからこそできる、野菜中心の栄養バランスが考えられた家庭的な和食料理です。メインは庄内豚と庄内浜でとれた新鮮なお魚から選べます。
せっかくなので、お肉もお魚も頂ける1,210円のランチを注文しました。
ちなみに、2品選べるメインの料理は、庄内豚のあさひ焼き(りんご甘だれ)とヒラマサの塩焼きを注文。
「あさひ焼き」というのは、すりおろししたリンゴとワインの酸味のきいた醤油ベースのあまだれソースとスタッフさんから教えていただきました。

こうした農家レストランで働く方から、その日の食材や調理法の説明を聞いて、料理を配膳してもらえることも、農家レストランの醍醐味です。

菜ぁに隣接している、ケーキやプリンなどの洋菓子が食べられる「東屋カフェ ふぅ」のスイーツメニューも提供しています。

外の景色などを眺めながら料理ができるのをしばらく待っていると、、、
「お待たせしました」と、先ほど「あさひ焼き」や、魚の種類について説明してくれたスタッフさんが料理を持ってきてくれました。

この日のメニューは先ほどのメイン料理に加えて、キャベツの胡麻あえ、大根の漬物、けんちん汁。ご飯は玄米と白米の合い盛りの大盛りです。大盛り無料もありがたいサービスです。普段何かと不摂生をしている私に、ほっとくつろげる温かいおもてなし。一粒残らずありがたく頂くと、お腹もいっぱいに。これらのお米や野菜は、小野寺さんの畑でとれたものというから、ますます満たされた気持ちになりました。

菜ぁでランチを食べたあとに、小野寺さんに話を伺いました。

グリーンツーリズムの本来のあり方、楽しみ方

「30年前ぐらいの初期は、単に作り手(生産者)と食べる側(消費者)の消費者間交流が原点であり、その価値を有価にしたものがグリーンツーリズムなんだと解釈しています。その農業を観光とかけ合わせたことは非常にいいことだと思いますが、8年前のグリーンツーリズムの全国集会に出席した際、「今のグリーンツーリズムは、お客様要素が強い(お客様にあわせた農業体験)ツーリズムにかわりつつあり、農家が大変になってきていて、フェアツーリズムでなくなってきている傾向がある」と論されていました。」
 
自身もどのようにグリーンツーリズムに携わるか悩みましたが、結論は自然体。あるべき自然な姿(農業に取り組んでる姿)や農風景を見て感じてもらうだけでも、都会の方の非日常がツーリズムとして価値があり、そこに交流することでお互いが楽しい時間をすごせるのだと小野寺さんは語ります。

「この地域の農家や食材について「知」ること、実際に「食」すること、農業を実際やってみて「体感」すること。この3つが大切だと考えています。しかし、この考えを実践するのは大変な取り組みです。本来農家は、農業を実践する姿を見てもらい、実際に体感してもらうことにこそ価値があると思うんです。」

グリーンツーリズムが地元の方が地元の良さ知るきっかけになればと!

小野寺さんは湯田川温泉青年部の方たちと一緒に地域づくりのグリーンツーリズムに取り組んでいた時期がありました。食、文化、農、観光など、その地域に関わる人や資源のすべてを取り込み、町を丸ごと博物館にしてしまおうという「庄内朝ミュージアム」という取組みです。

その時に大事にしていたのは「知」る・「食」する・「体感」するということ。
そこで再認識したのが、地元の人ももっと地元の「食や農」を知りたい、「体感」したいと思っているということ。

「今一番興味があるのが、地元の人へのグリーンツーリズムですね。地元の人たちにとっては日常的で価値がないことと思いきや、庄内朝ミュージアムを開催して自分も含めて地元がこんなに楽しいということを再認識できました。もっぱら、地元の人を喜ばせることができれば、都会の方にとってはもっとすごい価値なので、自然発生的に観光業につながると考えちゃいますね。」

「例えばですが、鶴岡の人は、だだちゃ豆が特産品であり、おいしいものであり、だだちゃとはお父さんを意味する方言だということは知っていますが、その奥にある歴史やおいしさの秘密や品種の特性など、まだまだ知らない魅力がたっぷりあります。単なる収穫体験ではなくて、朝取りをしている農家さんの顔や畑のにおいなどを感じてもらうツーリズムですね。」

2019年夏にオープンした東屋カフェふぅも、そういう空間になればと展開中です。
引き続き、本当に庄内に生まれてよかったという感動を地元の方に伝えていくことを大事にしていきたいといいます。

農家レストランを継いで感じたこと

「母親が創業した18年前は大半が地元の年配のお客様でした。その当時は農家レストランという単語もなかった時代ですが、年々観光客も増え「せっかく観光にきたなら地元のものを食べたい」というニーズがあったかと思います。

その中で、地元の幅広い年代のお客様(特にお子様連れのママグループ)が増えたのは東日本大震災のあとで、食文化創造都市への認定も含め、地元の方の食の関心がすこしづつ増えてきていると感じてます。その傾向はものすごくうれしいことであり、大事な流れだと感じています。

自分もUターン組ですが、何で帰ってきたかと言うと、庄内は食がうまいから。
山形県人会とかに参加しても芋煮だったり、人と人がつながるきっかけには必ず「食」があります。多くの家庭では、一か所で食材が揃うスーパーなどで地元産以外の食材を買いそろえることが多く、産直などで地元の食材や食文化に触れる機会が少なくなっていますが、それは、もったいないことです。

今は共働きが当たり前で、お母さん方もゆっくりご飯をつくるのも大変です。給食のときぐらいしかそうした食文化に関して学ぶところがなく、地元の食に触れる機会がなくなってきているんじゃないかと思っています。そこが農家レストランの一つの役割じゃないかなと思っています。」

庄内に生まれて本当によかったと、子どもたちに伝えていきたい。

「地元の人が都会に行ったとしても、地元でグリーンツーリズムというコンテンツに小さな頃から携われるかっていうのを意識していてこの菜ぁを運営してます。

先ほどお伝えしたようなお子さん連れのお母さんがうちで育てている野菜を食べると安心するんですよね。もっともっと米ってうまいんだよっていうのが地元の方に伝わることが真のグリーンツーリズムじゃないかなと思うんですよね。

そういった観光と地域再生と食育と各分野がバラバラではなくて、食の都庄内という言葉にあるように、一貫性をもって行っていきたいです。この先10年、20年、何もしなかったら、庄内のそうした部分はなくなっていってしまうんじゃないかなって。

自分の子供も5歳と3歳。その子たちがどうやって育っていくのかわかりませんが、自分のやってる姿を見て、少しでも何かを感じて、この庄内とかかわっていくきっかけとなってくれればなぁと感じてます。」

来ればきっと、地元の良さを改めて教えてくれるやさいの荘の家庭料理 菜ぁ。コロナ禍ではありますが、地元の方に庄内の魅力を再発見する意味で足を運んで欲しい場所です。県外からもお近くにお立ち寄りの際はお店の方に足を運んでください。(お一人様も歓迎です。)

施設紹介

やさいの荘の家庭料理 菜ぁ/東屋カフェ ふぅ
代表者名:小野寺 紀允
住所:山形県鶴岡市福田甲41
駐車場:10台(大型バスもOK)
電話:0235-25-8694
fax:0235-29-2260
営業時間
[菜ぁ]
11:30~14:30(昼営業)/ 17:30~21:30(夜営業 ※完全予約制)
13:00~16:30はカフェ営業のみ
[東屋カフェ ふぅ]
13:00~16:30(※火曜日のみ11:00~16:30の間 ランチ営業)
定休日
[菜ぁ]火曜(東屋カフェはランチ営業)
[東屋カフェ ふぅ]月曜・水曜・木曜

営業時間・定休日は変更となる場合がありますので、来店前に店舗にご確認ください。
新型コロナウイルス感染拡大により、営業時間・定休日が記載と異なる場合があります。来店時は事前に店舗にご確認ください。

<ライター紹介>

ライター:伊藤秀和
神奈川横浜市出身。2018年5月に三川町地域おこし協力隊として妻と2人の子どもと一緒に庄内地方に移住。WEBライターとして活動。ローカルメディア「家族4人、山形暮らしはじめました。」運営。庄内弁猛勉強中。

【作成記事】
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