世界が認めた霊山を歩く「出羽三山参り」

2018.12.25

江戸時代には「西の伊勢参り、東の奥参り」ともいわれ、あの「お伊勢参り」とともに人気を博した出羽三山参り。
羽黒山、月山、湯殿山へそれぞれ参拝するのが正式な参拝コース。
ここでは、日帰りで行ける羽黒山コースから、本格的な山伏修行体験まで、出羽三山のめぐり方を幅広くご紹介します。

また、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーを認定する『日本遺産』として出羽三山のストーリーも認定されています。

ミシュランで三ツ星獲得!世界が認めた霊山 羽黒山

①羽黒山のシンボル、国宝「五重塔」

まずは出羽三山の玄関口である羽黒山の「随神門」へ。ここから山頂まで続く杉並木は、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星に選ばれています。10分ほど歩くと、巨大な杉並木の中にそびえる五重塔が。思わず「おおー!」と感嘆の声を上げてしまう大迫力の景色です。東北地方では最古の塔、平将門の創建と伝えられ、国宝に指定されています。

この先を進むと、杉並木へと至ります。
羽黒山最大最高齢「爺杉(じじすぎ)」

羽黒山最大最高齢「爺杉(じじすぎ)」

五重塔の左にそびえ立つ巨杉が、樹齢1000年と言われる「爺杉(じじすぎ)」。 特別天然記念物にも指定された大迫力の杉と国宝の五重塔を一緒にカメラに収められる、おすすめの写真撮影スポット。夏にはライトアップが行われ、幻想的な姿を見せてくれます。

②名物!2446段の石段にチャレンジ

山頂へと続く2446段の石段。階段は一の坂~三の坂から成り立っており、あちこちに盃やひょうたんなどの絵が33個も彫られています。全部見つけると願い事がかなうとか。
二の坂を過ぎたところには茶屋があり、一服できます。そこからの景色は”絶景”の一言です!

※冬期間、五重塔から先の石段は除雪されていません。
 山頂へ行く場合は、随神門まで戻り、車または路線バスを利用することをおすすめします。

③「二の坂茶屋」の力餅でひとやすみ

二の坂茶屋の力餅は昔ながらの杵つきで、あんこ餅・きなこ餅・納豆餅の3種類の餅が名物。庄内平野を見渡しながらの一服は格別です。
(営業期間:4月下旬〜11月上旬)

④「羽黒山斎館」で滋味あふれる精進料理を味わう

昔から羽黒山に伝わる精進料理。「奥の細道」行脚で出羽三山を訪れた際、松尾芭蕉も食べたとか。山で採れる旬の山菜・きのこ・タケノコなどがお膳に並べられて供されます。特に人気なのが醤油風味の甘いあんがかかったぷるぷるのごま豆腐。滋味あふれる精進料理で山のパワーをチャージできるはず。

※料理は予約制です。
※斎館は出羽三山をお参りする人達の為の宿泊所。月山・湯殿山もめぐる人はここで1泊を。

⑤出羽三山の神々を祀る「出羽神社 三神合祭殿」を参拝

日本最大級の茅葺屋根を持つ大社殿の存在感は圧巻!総漆塗の内部も迫力があり、見ごたえ十分。ここ、三神合祭殿(さんじんごうさいでん)には、その名の通り、月山・羽黒山・湯殿山の三神が祀られています。月山や湯殿山は冬季は雪で参拝ができませんが、ここを参拝すれば三神をお参りしたことになるとされていますので、三山の参拝が難しいという方におすすめ。
※羽黒山も冬は雪に覆われます。長靴などの装備は必要です。
傘や杖の貸し出しも。参拝前の準備はこちらで・・・

傘や杖の貸し出しも。参拝前の準備はこちらで・・・

羽黒山杉並木の入口 随神門の近くにある「いでは文化記念館」の館内には、羽黒町観光協会もあるので参拝前の情報収集におすすめ。杉並木を歩くときに使う杖や傘、冬場は長靴も貸してくれます。これで急な雨や雪でも安心ですね。但し、数に限りがあるので装備は万全に。 館内には羽黒山の歴史や文化が学べる展示や山伏の必需品・法螺貝(ほらがい)を吹ける体験もできちゃいます。初心者には難しいと言われる法螺貝吹きに挑戦してみて!

※留意事項(2020年11月時点)
・法螺貝の試吹 ⇒休止中
・杖の貸出し 1本100円 (長靴、傘は無料)
・冬場の石段は、除雪もなく、大変滑りやすくなっておりますので、雨や雪の際は、いでは文化記念館で長靴を借りるなどしてご参拝ください。

⑥羽黒山お参りのアクセス

【徒歩で行く場合】
 随神門 ⇒(徒歩約15分)⇒ 五重塔 ⇒(徒歩約20分)⇒ 二の坂茶屋 ⇒(徒歩約30分)⇒ 三神合祭殿

【路線バスで行く場合】
 羽黒随神門バス停 ⇒(路線バス約15分)⇒ 羽黒山頂 ⇒(徒歩約5分)⇒ 三神合祭殿
 バス時刻表はこちら≫

【自家用車で行く場合】 
 随神門近くの駐車場 ⇒(車約10分※)⇒ 山頂駐車場 ⇒(徒歩約5分)⇒ 三神合祭殿
 ※通行料金が必要です。
羽黒山山頂(駐車場)ライブカメラ

羽黒山山頂(駐車場)ライブカメラ

羽黒山山頂の様子を知ることができるライブカメラ映像をご活用ください。お車で羽黒山山頂へ向かう場合の駐車場の混雑状況や山頂のお天気状況の確認にとっても便利です。

死者を祀る幽玄たる霊山 月山

①月山山頂に鎮座する「月山神社」

月山(がっさん)の山頂に鎮座する「月山神社」は、近代社格制度における東北で唯一の旧官幣大社であり、守護神、月読命が祀られています。山頂からの眺めは、庄内平野はもちろん、鳥海山、朝日飯豊連峰、遠く岩木山、八幡平までも望むことができる絶景です。
クロユリやオゼコウホネなど、希少な高山植物があちこちに咲いています。

月山八合目より頂上までの山道は国立公園であると共に、出羽三山神社の境内地であり私有地。特に頂上の月山神社本宮内は、広大な境内地の中でも、古来より特別な神域となっています。(月山八合目から山頂まで片道約3時間)

■開山期間:7月1日~9月15日頃まで
■月山神社本宮へ参拝するためにはお祓いを受ける必要があります。(お祓い料:500円)
※登山道から約1時間30分登った場所にある佛生池小屋、月山本宮から3分ほど下った場所にある月山頂上小屋は宿泊も可能です(要予約)
■登山靴、防寒具、レインコートなどの登山装備が必要です。アクシデントに備えての食料や水なども必ず用意しましょう。
月山ガイド協会では、八合目から頂上までの往復ガイドや湯殿山へ縦走する場合のガイドも受付しています。月山ガイド協会が紹介するガイドは、全て日本山岳ガイド協会認定ガイドです。
まぼろしの花 クロユリ

まぼろしの花 クロユリ

6月~7月初旬に月山の山頂に咲くクロユリは「恋の花」「まぼろしの花」とも言われる月山特有の高山植物。黒褐色の花をつけ凛とした姿が神秘的です。
※開山前は必ずガイドをつけて登山してください。
※7月中旬までは残雪があり、アイゼンが必要な場合もあります。

②月山八合目に鎮座する「御田原神社」

月山の登山は難しいという方は、月山八合目駐車場から徒歩約10分の月山中の宮に鎮座する御田原神社へ参拝を。稲田の守護神である奇稲田姫神(くしなだひめのかみ)が祀られていて、山頂の本宮を参拝したのと同じご利益があると言われています。古くから「月山の神様のお使い」とされている兎には、悪運から逃れる力があるそう。御田原神社近くにある「なで兎」をなでて、悪運を払いのけてもらいましょう。
お社の隣には御田原小屋(参籠所)があるので、宿泊も可能です。(要予約)
天空の楽園 月山八合目 弥陀ヶ原でウォーキング

天空の楽園 月山八合目 弥陀ヶ原でウォーキング

御田原神社参拝の後は、月山八合目 弥陀ヶ原の散策がおすすめ。1周約60分の木道が整備されているので、登山初心者でも安心です。夏には、ニッコウキスゲやミズバショウなど130種類以上の高山植物で埋め尽くされ、日本でもトップクラスの高山植物の宝庫との呼び声も。
秋には見渡す限りに広がる黄金色の草紅葉が!まるで黄金色の絨毯の上を歩いているよう。澄み渡った真っ青な青空とのコントラストはまさに絶景です。標高約1,400mの清々しい風を感じながら、癒しのウォーキング旅に挑戦してみませんか?

出羽三山の奥の院 神秘が息づく「湯殿山神社」

湯殿山は月山や羽黒山で修業を積んだ山伏が最後に修行に入る山。昔から「語るなかれ」「聞くなかれ」と口外することは固く禁じられてきました。湯殿山神社本宮は、写真撮影禁止、参拝は土足厳禁という厳しい戒めで知られています。参道を素足で歩くことで、山の大地の気を直に感じられるかもしれません。
一方で湯殿山は「恋の山」とも呼ばれていて、縁結びスポットとしても有名。ここ湯殿山でしか手に入れることができない「恋の山守り」は縁結びのお守りとして、女子に人気のお守りです。
大鳥居の隣にある湯殿山参篭所は宿泊や日帰り入浴も可能(要予約)。入浴の際は、浴室の神棚に一礼してから入浴してください。

■開山期間:5月1日頃~11月3日頃まで(開山祭は6月1日、閉山祭は11月1日)
■湯殿山本宮へ参拝するためにはお祓いを受ける必要があります。(お祓い料:500円)
※大鳥居から本宮までは、徒歩でも行けますが本宮参拝バスでの移動がおすすめです。
 バスの時刻表はこちら≫
※自家用車で湯殿山駐車場までお越しの場合は、有料道路を通行します。
秋は徒歩で・・・紅葉散策もおすすめ

秋は徒歩で・・・紅葉散策もおすすめ

湯殿山は紅葉の名所でもあります。秋になると周り一面の山々が黄色や赤にと彩り豊かに染まります。大鳥居から本宮までは歩いて約20分、紅葉散策もおすすめです。
※紅葉の見頃:9月下旬~10月上旬

もっと興味のある方は・・・・・

①修験者の雰囲気を味わう・・・白装束体験

修験者が身につける白装束を着て羽黒山や湯殿山を参拝すれば、より一層心が磨かれお山のパワーを頂けることでしょう。全身真っ白な白装束を身にまとい、自分の足で一歩ずつ修験道を歩いてみませんか?

※3日前まで要予約
※白装束の着付けは宿坊・旅館で行うため、宿坊での精進料理の事前予約も可能です。

②勤行や精進料理・・・宿坊泊だからこそできる体験

宿坊はもともとは修験者のための宿泊施設でしたが、最近では一般の参拝者も受け入れてくれる施設が増えてきました。宿坊の魅力は、勤行(ごんぎょう)という毎朝行われる御祈祷に参加できることと、地元の食材をふんだんに使った精進料理を味わえること。また、山を知り尽くした山先達が案内する月山・湯殿山ツアーや山伏修行などを行っている宿坊もあり、観光だけでは物足りないという方がたくさん参加しています。

③もっと深く出羽三山の文化を体験したい方は・・・山伏体験

山伏修行の一部を実際に体験できる山伏体験は、年齢や性別に制限はなく、修行に耐え抜く強い気持ちがあれば誰でも参加OK。本物の山伏のように”滝行”や”火渡り”などもありますので、ここまでくると旅行者気分では厳しいかも。
観光客として出羽三山を訪れ、その結果この世界に”はまる”人も大勢いらっしゃいますのでまずはこの不思議なスポットを巡ってみましょう。

さらに、本格的に修行したい人は…

羽黒修験にとって最も重要な修行のひとつ、秋の峰入り。修験者たちは、神霊が宿り、新たな生命を育む山に籠り、自らの生まれ変わり(擬死再生)をはかります。そんな古代的感覚を色濃く残す羽黒修験は、一般の方も参加できます。他では体験できない本格的な修行を行ってみませんか?

↓男性向け
 ■参加資格:山駈等の厳しい荒行に耐え得る男子
 ■期間:8月下旬~9月上旬の7日間
 ■受付期間:5月初旬~5月末日まで(抽選制)
 ■経費:50,000円

↓女性向け
 ■参加資格 :山駈等の厳しい荒行に耐え得る女子
 ■期間:9月初旬の4日間
 ■申込期間:6月初旬~8月中旬(先着順、収容人数に達し次第締め切り)
 ■経費:40,000円
出羽三山からちょっと足を延ばして・・・座禅体験

出羽三山からちょっと足を延ばして・・・座禅体験

鶴岡市の「玉川寺(ぎょくせんじ)」「善寶寺(ぜんぽうじ)」では所要時間2時間ほどで座禅体験をすることができます(要予約)。日頃の喧騒から離れて、心も体も無になれば新しい自分を発見できるかもしれませんよ。

玉川寺座禅会 詳細はこちら≫
善寶寺座禅会 詳細はこちら≫

【日本遺産】自然と信仰が息づく「生まれかわりの旅」

平成28年度に「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』~樹齢300年を超える杉並木につつまれた2,446段の石段から始まる出羽三山~」として出羽三山のストーリーが日本遺産に認定されました。公式サイトでは、構成文化財や出羽三山に関連するイベント、動画などの情報が多く掲載されています。是非ご覧ください。

(以下、申請書ストーリー概要より引用)
山形県の中央に位置する出羽三山の雄大な自然を背景に生まれた羽黒修験道では、羽黒山は人々の現世利益を叶える現在の山、月山はその高く秀麗な姿から祖霊が鎮まる過去の山、湯殿山はお湯の湧き出る赤色の巨岩が新しい生命の誕生を表す未来の山と言われます。
三山を巡ることは、江戸時代に庶民の間で『生まれかわりの旅』として広がり、地域の人々に支えられながら、日本古来の、山の自然と信仰の結び付きを今に伝えています。羽黒山の杉並木につつまれた石段から始まるこの旅は、訪れる者に自然の霊気と自然への畏怖を感じさせ、心身を潤し明日への新たな活力を与えます。