最上の秘境!樹齢千年以上の天然杉が群生する「幻想の森」で神秘の森林浴

2021.06.29

庄内エリアからほど近い戸沢村。最上川舟下りや、突如現れる韓国建築が目を引く「道の駅とざわ」で有名なここ戸沢村に、もう一つ隠れた名所があることをご存じですか?

その名も「幻想の森」。

国道47号線に設置された標識から脇道に入った山の奥深くにあるその森は、樹齢千年以上の巨大天然杉が群生する、その名が表す通りの幻想的な空間でした。

そんな神秘の森に、日ごろより運動不足極まりないライターのガンバリーニ杏子が散策に行ってきました!

最上峡案内人協会の方のガイドで安心!いざ、人里離れた山奥へ

「幻想の森」があるのは、標高わずか260mの場所。しかも、国道47号線に設置された「幻想の森」という標識を曲がってから現地に到着するまでは車でおよそ15分。一本道なので迷う心配もありません。

それだけ聞くと、「麓からそんなに近いところに、本当に秘境めいたスポットなんてあるの?」と思うかもしれませんよね。私も最初はそう思っていたのですが、実際に訪れてみて驚きました。何故なら、まるで某もののけアニメ映画の中で見たような森が目の前に出現したといっても過言ではなかったからです。

ちなみに森へと続く林道はなかなかの細さ。もちろん自家用車で行くこともできますが、決してスピードを出さず、くれぐれも安全運転で行きましょう。

そして私のような「山道の運転には自信がない」という方には、最上川交通株式会社が季節・曜日限定で行っている、送迎付きの「幻想の森へのガイド付きツアー」がオススメです。

このツアーを利用すれば、「戸沢藩船番所」、「JR古口駅」、「川の駅くさなぎ」のいずれかに集合するだけで現地まで連れて行ってもらえるうえ、最上峡案内人協会のガイドの方から森の詳しいお話を聞きながら散策することができます。

また今後、最上川交通株式会社では、幻想の森を含めたミニツアーを多数行う予定があるとのことなので、気になる方はぜひ記事末尾にある連絡先に問い合わせてみてください。

さて、それでは主催である最上川交通株式会社の車で、「幻想の森」へ向けて出発です!

森にたどりつくまでの道のりは、まさに分け入っても分け入っても青い山……時節柄、緑が非常にきれいです。お天気が良く絶好の散策日和であるからか、麓から幻想の森にたどり着くまでの間に3台の車とすれ違いました。

車から降りると、すぐ目の前に「幻想の森」が広がっていました。今回のガイドを務めてくださるのは最上峡案内人協会の佐藤稔さん。ご挨拶の後、早速、佐藤さんから森のお話を聞きます。

幻想の森は、写真を撮りながらゆっくり一周しても30分ほどという大きさで、ルートにはウッドチップが敷かれているため迷う心配もないとのこと。それを聞いてまず私は一安心。何故かといえば、自慢ではないですが私はとんでもなく運動不足。トレッキングのようなコースだったらどうしよう……と、不安に思っていたのです。

「ふかふかのウッドチップのおかげで膝に負担もかからないし、傾斜も厳しくないから小さい子でも年配の方でも歩けますよ」という佐藤さんの言葉に、俄然、勇気が湧いてきました。

国内でもここだけがいっぱい!不思議があふれる森のおはなし

最上川左岸に位置する「幻想の森」は、1200~1500年前の原生林、そして広葉樹と針葉樹が混ざって生えているという、国内でもここだけという非常に珍しい場所。そして天然杉は約75ヘクタールにわたって生えており、「幻想の森」がある最上川左岸にそのうちの8割が存在しているのだそう。

天然杉が群生している場所と言えば、九州の屋久島や富山の黒部が有名ですが、共通しているのは「雨が多く、湿度が高い」という点。屋久島では年間降雨量が4000ミリ程、黒部は3500ミリ程もあるのだとか。

しかしここ最上峡の年間降雨量はというと2600ミリ程。それなのに何故天然杉の群生林があるのかというと……はっきりしたことはわかっていないそう。ただ、「幻想の森」は北向きの斜面にあるため、5月の連休過ぎまで溶けずに残った雪が湿度をもたらしたのではないかと推測されているようです。

その他にも、森に関する解明されていないことがある、と佐藤さんは言います。

まずは樹齢。1000年を超えるどころか、樹齢1200~1500年だろうと言われているものの、文献にも残っていないため正確な数値はわからないのだとか。

そしてもう一つ。これが「幻想の森」の大きな特徴でもあるのですが、この森に生えている天然杉の多くが、「多幹型の杉」であることです。どんなものかというと……

通常、根元から倒れた木は枯れてしまいますよね。しかしこの森では、倒れた株からまた新しいものが生え、たこ足型の木として成長していくのです。このような形状の天然杉が存在するのは国内でもここだけなのですが、何故このような形になるのかは……学術的にもわかっていないそうです。

解明されていない謎が多くある森だなんて、ロマンがかき立てられませんか?

心が浄化される気分♪不思議の森で深呼吸

森の中へ分け入っていくと、右も左も巨大な杉、杉、杉。視界に入る巨大杉のほとんどが、案内人の佐藤さんがいうように「タコ足型の幹」を持っているのですから、自然の神秘を感じずにはいられません。

この「幻想の森」は、吉永小百合さんが登場するJR東日本「大人の休日倶楽部」のCMやポスターに登場した場所でもあります。当時、80人からなる撮影隊がここを訪れたのだとか。

吉永さんが杉の木に頬を寄せるシーンで一躍有名になったCMでしたが、案内人の佐藤さんが「撮影に使われたのはこの木で、カメラはそっちの方向から撮った」と丁寧に教えてくださいました。せっかくなので、佐藤さんを吉永小百合さんに見立ててパチリと撮影しました。

さらに森の奥へと進んでいくと、ひときわ巨大な杉が現れました。

これこそ、「幻想の森」の主と言われる大杉で、戸沢村のポスターにも使われたもの。とても巨大なタコ足型をしていますが、この木も例に漏れず、元々は一本の木なのだとか。

以前はあった幹が落雷か何かで折れてしまったものの、根元の周囲がおよそ17mもあるということで、佐藤さんたちは環境省に「日本一の杉」だと申請をしたそうです。

「環境省に写真をつけて送ったけれど、幹がない木は1本の杉とみなさないという答えが来て、残念ながら日本一になれなかった」と、佐藤さんは少し残念そうに言っていました。

入口を背に一番奥の場所から、正面にまっすぐな木々が生えている光景が目に入りました。佐藤さんによると、あれらも杉の木だそう。しかし、私たちがいる「幻想の森」にあるものとは全く違い、空に向かって細く長く伸びています。

何故このような違いがあるかというと、まっすぐな杉の木は人の手で造林したものだからなのだとか。現金収入を得るため、かつて国有林を借りて植樹し、50年間草を刈ったり間伐したり枝を売ったりと林業で生計を立てていたものの、最近では人手が少なくなってきたため、管理は森林管理署が行っているそうです。

コロナ禍という状況なので、散策中もマスクをしていましたが、ふと思い立ってマスクを外して息をしてみたら……みずみずしい緑の香りが拡がっていることに気づきました。「幻想の森」に行ったら、ぜひ一度はマスクを外して深呼吸してみることをおススメします。

ところで、「杉の木が群生している」というと、スギ花粉アレルギーの方は行くのをためらってしまうかもしれません。しかし、花粉の心配はない、と佐藤さんは言います。何でも、花粉を飛ばすのは杉の若木のみ。樹齢何百年となった木はもちろんのこと、樹齢約50年の造林木ですら花粉を飛ばすことはないそうなので、花粉症の方も安心して「幻想の森」の散策を楽しむことができます。

杉の木以外も見どころ沢山!季節限定の隠れたスポット「カスミザクラ」

「幻想の森」では群生する巨大杉にまず圧倒されますが、杉の木以外にも様々な植物があります。

散策中に案内人の佐藤さんが教えてくださっただけでも、ブナやユキツバキ、朴の木、クロモジに山椒の木、山漆……とまさに自然の宝庫。中には、地面からではなく杉の木から生えている植物も。

佐藤さんによれば、「鳥が種を食べて糞をして、それがうまいこと杉の幹から発芽した」とのこと。

中でも特に珍しいのが、出口の近くにある杉の木から生えた「カスミザクラ」。

「杉の木から生えた」というより、桜の木が杉をどんどん浸食している様子がわかるのですが、これも「桜の実を食べた鳥がした糞が杉の木に落ち、そこから芽が出た」というもの。そして驚くべきことに、このカスミザクラは毎年ゴールデンウイークの前頃に開花するのだとか。

他の木から生えているというだけでも珍しいのにさらに花を咲かせるなんて、植物の生命力の高さに驚かされてしまいます。

カスミザクラが生えた杉の木の辺りから振り返ると、天然杉が一列に並んでいる様子が見えます。そしてその右手には「幻想の森」の出口があり、散策は終了。佐藤さんのお話を聞きながら、そして写真を撮りながらゆっくり歩きながらのおよそ30分の旅でした。

「幻想の森」を訪れる前は、運動不足なのに大丈夫かな……と心配していた私ですが、全く問題ありませんでした。

トレッキングシューズも山歩きの装備も必要なく(とはいえ、ハイヒールやサンダルはおすすめしません)、ウッドチップのおかげで足腰が弱い方でも負担なく進むことができるため、幅広い年齢層の方が楽しめる秘境なのではないでしょうか。

佐藤さんによると、森の中で杉の巨木に囲まれてピクニックを楽しんでも良いそうです。ただし、撮影のために杉の木によじ登ったり、ウッドチップが敷かれていないところまで踏み込んだりするのはやめてほしいとのことなので、マナーを守って森林浴を楽しみましょう。

また、冬の間は麓からかんじきで「幻想の森」までやってくるトレッキングツアーが実施されることも。森の中にも生えているクロモジを使ってツアー前日にかんじきを編むという本格派。

森は標高260mとはいえ、一体どれくらい時間がかかるのか佐藤さんに伺ってみたところ、「国道からだと片道3時間」とのことなので、体力に自信がある方は是非挑戦してみてはいかがでしょうか。

私はというと……雪がない時期にのんびり森の散策をする方がいいなあと思いながら、森を後にしました。

幻想の森で散策した後におなかが空いたら……

散策終了後、今日の集合場所であった「戸沢藩船番所」に戻ってきたのが13時半頃。せっかく戸沢村を訪れたので、どこか昼食に良い場所はないかなと調べてみました。

「戸沢藩船番所」の中にも食事処があり、最上川舟下りを利用しなくても食事休憩ができるのですが、そういえばと思い出したのが、「戸沢藩船番所」から車で酒田方面に10分ほど向かったところにある「白糸の滝ドライブイン」。

この施設2階にある「パーラー白糸の滝」で提供されているメニューが、しばしばSNSをにぎわせているのです。普通の喫茶店だと思って行ったら、度肝を抜かれるかもしれませんよ。

もちろん普通のメニューもありますが、ここはやはり話題のメニューに挑戦したい……ということで選んだのが「滝バーガー」。米の娘ぶたのヒレカツが挟まれたバーガーが縦に3つ重なり、プレートの上にはポテトがたっぷり盛られているというボリューム満点の内容です。

窓の外をとうとうと流れる最上川を眺めながらしばらく待っていると、例のバーガーが運ばれてきました。

縦に3つハンバーガーが並んだその様子は、まさに「滝」!むしろ、滝というより瀑布といった方がふさわしい迫力です。

太めの竹串が貫通しているため倒壊の危険性は少ないものの、バーガーを取り外すときにはそれなりに緊張が走ります。

無事にバーガーを取り外したら、お待ちかねの実食タイム。コロナ禍ということで、黙々とかぶりついたのですが……やわらかいバンズ、サクサクのヒレカツ、そして新鮮野菜と甘めのソースが混然一体となったとてつもない美味しさ!あっという間にぺろりと食べきり、その後はお皿に敷き詰められていたポテトをこれまた黙々といただきました。カリっとしたタイプのポテトで、病みつきになる美味しさでした。

「滝バーガー」は三段重ねですが、さらに食欲に自信がある方には「五重塔バーガー」なる、驚異の五段重ねバーガーも存在します。大人数でシェアしたい方、ハンバーガーをたらふく食べたくてしょうがない方は、是非挑戦してみてはいかがでしょうか。

「白糸の滝ドライブイン」では、パーラーの他にもフードコーナーがあり、そちらでは週末限定ですが、見た目が素敵なフルーツサンドなども販売されています。

営業時間も朝7時からなので、「幻想の森」の行きでも帰りでもどちらでも立ち寄りやすいドライブインだと思います。

次のお休みは、ドライブがてら戸沢村で夏の休日を過ごしてみませんか。


■幻想の森
住所:999-6401 山形県最上郡戸沢村古口土湯 幻想の森
入場料:無料
問い合わせ先:戸沢村観光協会(0233-72-2110)
車での行き方:戸沢村観光物産協会公式サイト「とざわを旅する。」
ガイド付きツアー問い合わせ:最上川交通株式会社(0233-34-7051)
ウェブサイト:https://www.mogamigawakotsu.jp/

■戸沢藩船番所
住所:山形県最上郡戸沢村古口86-1
電話番号:0233-72-2001(最上峡芭蕉ライン観光)
営業時間:8時30分~17時(12~3月は9時~16時30分)
ウェブサイト:https://www.blf.co.jp/index.html(最上峡芭蕉ライン観光株式会社)

■パーラー白糸の滝
住所:〒999-6401 山形県最上郡戸沢村古口1495-1
電話番号:0234-57-2146
ウェブサイト:http://parlor-shiraitonotaki.com/l
営業時間;10:00~17:00

■白糸の滝ドライブイン
住所:〒999-6401 山形県最上郡戸沢村古口1496-1
電話番号:0234-57-2011
Eメール:shiraitonotaki@comet.ocn.ne.jp
ウェブサイト:http://www.shiraitonotaki.com/
営業時間:07:00~20:00

幻想の森(庄内観光コンベンション協会作成)