【観光の舞台裏vol.8】藤島歴史公園「Hisu花」ワークショップ リーダー 井上夏

2021.11.01

庄内の観光に携わる“人”にフォーカスして、その舞台裏をインタビューする「観光の舞台裏」シリーズ。第8回目の舞台は、庄内最大級のイルミネーションスポット、藤島イルミネーションです。

毎年、鶴岡市の藤島歴史公園「Hisu花(ヒスカ)」にて期間限定で開催されるこちらのイベント。はじめは6,000個の電球からのスタートでしたが、年を追うごとにその数は増え、6回目の開催となる今年はなんと16万個の電球が公園を照らす予定です。今や県内でも指折りのイルミネーションへと急成長を遂げた藤島イルミネーションですが、その背景には地元藤島を中心とした市民の方々の試行錯誤がありました。

そこで今回は、藤島イルミネーションの企画運営に携わる藤島歴史公園「Hisu花」ワークショップリーダーの井上夏さんにお話を伺いました。

(※)2021年10月に取材した内容となります。

藤島イルミネーションの成り立ち

  • 鶴岡市藤島庁舎提供

藤島イルミネーションの始まりは、2015年(平成27年)、会場である藤島歴史公園「Hisu花」の開園まで遡る。
藤島歴史公園は、庄内地方のほぼ中央である鶴岡市藤島地域(旧藤島町)の中心部に位置し、大藤棚や藤のトンネルなど、藤島地域のシンボルである“藤の花”を堪能できるスポットとして誕生。「Hisu花」という愛称は、“History(歴史)”“Utopia(理想郷)”“藤の花”の3つのキーワードを掛け合わせたもので、「歴史と花があふれるユートピアのような公園にしたい」という想いから名付けられた。
  • 鶴岡市藤島庁舎提供
  • 鶴岡市藤島庁舎提供

しかし、開園したはいいが、藤がまだ成長していないこともあり、誰も公園にやってこない。そこで、開園の翌年である2016年(平成28年)の冬、市役所主導でイルミネーションを始めることに。最初は6,000個の電球から始まり、翌年2017年(平成29年)には23,000個へと拡大。それでも人は思うように来なかった。そして2018年(平成30年)、本格的にHisu花を盛り上げて行くため、旧藤島町の人を中心とした市民ワークショップが立ち上がった。

藤島地域のためのイベントから地域外から人を呼ぶイベントへ

  • 鶴岡市藤島庁舎提供

「作ったけど、人が来ないからどうしたらいい?っていきなり聞かれたんですよ。」
現ワークショップリーダーの井上さんは、笑いながらワークショップ立ち上げ当時のことを振り返った。当時のメンバーは20名ほど。下は30代、上は70代という幅広い年齢層の方々が、市役所の職員の声かけで集まったという。
  • 鶴岡市藤島庁舎提供

最初はイルミネーションに限らず公園の利活用方法を検討していたが、ちょうどその年「鶴岡市地域まちづくり未来事業」として地域振興のための活動に大きな予算がついたため、前年度の約6倍である13万3,000個の電球を用意することに。それも後押しして、ワークショップではイルミネーション開催初日に行う点灯式を「Hisu花deないと」というマルシェを組み合わせた企画にして開催することにした。

その年は12月下旬から約1ヶ月間ほどの点灯期間を通して5,000人ほどがHisu花に来場。井上さんを含むスタッフも手応えを感じ、翌年から“地域の人に喜んでもらうためのイベント”という位置付けから、“地域外から人を呼び込んでくるイベント”へと舵を切っていくことになる。

子どもたちに地元を誇りに思ってもらうために

ワークショップ立ち上げ2年目からリーダーという大役を務めることになった井上さん。すっかり地元に溶け込んでいるが、実はご出身は酒田市とのこと。21歳で結婚して藤島へと移り住み、現在は3人のお子さんの子育てをしながら、ご主人の家業である井上農場で経理や広報などを担当。さらには“農業女子”としての取り組みも行なっており、県内の農業女子ネットワークの立ち上げ等にも携わったりと、公私ともに精力的に活動している。
  • 鶴岡市藤島庁舎提供

ワークショップのリーダーを頼まれた時に出した条件は、「私がやりたいことをやらせてもらうこと」。その言葉通り次々と井上さんがアイディア出し、それをワークショップメンバーや市役所職員が一緒になって企画へと変え、実行していった。
その一例が、2019年(令和元年)に「Hisu花deないと」の第1部として行われた音楽フェス。元々井上さん自身が音楽好きで、音楽をやっている人を応援したいという想いがあり、地元庄内のバンド7組を招待。点灯式の日の日中にステージを用意して演奏をしてもらったところ、初めての試みにも関わらずたくさんの人が訪れた。

また、ワークショップ3年目となる昨年2020年(令和2年)は新型コロナウイルス感染拡大防止のため「Hisu花deないと」など人を集める催し物はできなかったものの、新たにインスタグラムとYouTubeアカウントを開設。点灯式の模様をインスタライブで生配信した他、アーカイブを後日YouTubeにアップしてオンラインでも藤島イルミネーションを楽しんでもらえるよう配慮した。
  • 鶴岡市藤島庁舎提供
  • 鶴岡市藤島庁舎提供

このような取り組みが功を奏し、2019年には点灯期間中を通して約2万人、2020年には約2万2,000人が来場。トントン拍子で県内でも屈指のイルミネーションへと成長していった。

どうしてそこまで頑張れるのか、活動する上での原動力を井上さんに尋ねると、こう答えた。
「子どもたちに、藤島のことを誇りに思ってほしいという気持ちですかね。イベントが大きくなっていくにつれて、家族も年々『うちの嫁(ママ)がリーダーをやってる』と自慢げに話しているみたいです。笑」

県内、そして東北最大のイルミネーションを目指して

2021年の藤島イルミネーションのコンセプトは、“星に願いを”。このコンセプトには、まだまだ終わりが見えないコロナ禍で、少しずつ状況も変化し光も見えつつある中、世界中の人々が笑顔で過ごせますようにとの祈りを込めたと言う。

今年も感染状況を鑑み「Hisu花deないと」の開催は断念したものの、昨年同様生配信を行うほか、初の取り組みとして今年のコンセプトにちなんだ「星座イルミネーション」を実施。冬の大三角形をボール型のイルミやチューブイルミで表現したり、冬の天の川をイメージした新しいイルミネーションなどが登場する予定だ。

実はこの企画、鶴岡市の別のエリアから自ら希望して加わったメンバーの発案とのこと。ワークショップメンバーも旧藤島町民だけではなく市内外の有志の方が徐々に増えてきた、と井上さんは話す。なんと、東京からZoomで参加しているメンバーもいるんだとか。

やりたいことのある方が集まって面白い企画へとつながっていく。だからたくさん人が来る。そして、自分も見るだけでなく企画から携わりたいという方が増えていく。このポジティブなサイクルが、藤島イルミネーションをより魅力的なイベントへと成長させていくのだろうな、と、腑に落ちた瞬間だった。

県内最大、そしていずれ東北最大のイルミネーションになることを目指して。藤島イルミネーションの躍進は、これからも続く。


【イベント情報】
開催期間:2021年11月3日(水・祝)〜2022年1月10日(月・祝)
開催時間:期間中、毎日16:30~21:30(※11/3のみ18:00~)
場所:山形県鶴岡市藤島字山ノ前地内
料金:入場無料
駐車場:隣接の鶴岡市藤島庁舎の駐車場または東田川文化記念館の駐車場をご利用ください。路上駐車は交通の妨げとなるため絶対におやめください。
<駐車場の住所>
鶴岡市藤島庁舎:〒999-7696 山形県鶴岡市藤島字笹花25(約200台)
東田川文化記念館:〒999-7601 山形県鶴岡市藤島字山ノ前99(約50台)

(サイト内イベントページ)藤島イルミネーション

藤島イルミネーションインスタグラム(@fujishima_hisuka)
藤島イルミネーションフェイスブックページ
缶バッチを買うと電球が増える?!

缶バッチを買うと電球が増える?!

藤島イルミネーションでは、1口100円の募金で1球電球が増える「みんなで電球を増やそう!缶バッチ1個買うと1球増える!プロジェクト」を行なっています。昨年から始まったこのプロジェクトですが、多くの方のご協力をいただき今年は756個の電球を買うことができたそうですよ。自分の募金がイルミネーションを彩ることにつながると思うと、とっても素敵ですよね。
募金をした方には、もれなくオリジナル缶バッチがもらえるとのこと。藤島イルミネーションをもっと大きなイベントにする一助になってみませんか?

【庄内最大】藤島イルミネーション2020 in Hisu花

<ライター紹介>

現在地元ライター:國本 美鈴(くにもと みすず)
埼玉県深谷市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、都内の情報・通信系企業にて新規事業立ち上げやメディアの編成・PR等を担当したのち、2019年7月〜庄内に移住。現在、庄内町地域起こし協力隊観光PR担当として、イベントの企画やSNS等を活用した地域の情報発信などを行うほか、北庄内地域通訳案内士の資格も持つ。これまで訪問した国は45カ国という大の旅好き。庄内の魅力を県内外、そして海外の人にも発信すべく奮闘中!

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