今更聞けない!?日本有数のパワースポット、出羽三山とは

2021.03.31

こんにちは、地元ライターの國本です。

庄内きっての人気スポットとして国内外から多くの方が訪れる「出羽三山」。名前は聞いたことがあるという方や、実際に羽黒山五重塔などを訪れたことがあるという方もいらっしゃると思いますが、いざ「出羽三山とは一体どんなところ?」と聞かれたとき、スラスラと答えられる人は案外少ないのではないでしょうか。
大変恥ずかしながら、実は私自身、こちらに移住してくるまでは出羽三山の“三山”とはどれを指すのかすら理解していないような状態でした…。

そこで今回は、出羽三山神社を訪問。今更人に聞くのが気が引けてしまうような出羽三山の基本的なアレコレについて、出羽三山神社禰宜の吉住登志喜さんに教えていただきました!

そもそも出羽三山とは?

・出羽三山の成り立ち

出羽三山とは、「羽黒山」「月山」「湯殿山」の総称。庄内地方のある場所はかつて「出羽国(でわのくに/いではのくに)」呼ばれていたことから、「出羽三山」と名付けられました。

その歴史は、遡ること1,400年以上前。第32代天皇の崇峻天皇の第一皇子であった蜂子皇子が、父を暗殺した蘇我馬子から逃れて出家。その後羽黒山にたどり着き、修行の末羽黒山頂に社を創建したことが始まりと言われています。
なお、「羽黒山」は蜂子皇子が“羽の黒い鳥(=カラス)”に導かれてたどり着いたことからそう名付けられたとのこと。

蜂子皇子は同じ年に月山を、そして12年後に湯殿山を開き、今日の「出羽三山」となりました。

(画像提供:羽黒町観光協会)

・「修験道」とは?
国土の大半が山に覆われている日本では、古来より山のお力で人々を助ける「山岳信仰」が伝わっていました。そこに当時日本に入ってきたばかりの仏教が組み合わさった日本独特の宗教が「修験道」。つまり修験道は、山の神様への自然崇拝と、仏様への偶像崇拝、両方の側面を併せ持つ、いわゆる“神仏習合”の宗教なのです。

時を同じくして、熊野三山(和歌山県)、英彦山(ひこさん/福岡県・大分県)を始め、各地の小さい山々にまでも修験道が存在。やがてそれらは集約され、現在熊野三山、英彦山、出羽三山は“日本三大修験道”と言われています。

明治時代の神仏分離令の影響により主に神道化が進んでいきましたが、出羽三山には今なお神仏集合の名残が色濃く感じられます。
ちなみに、庄内エリアの家々の多くには、同じ部屋の中に神棚と仏壇が両方ある家が今でも多く存在するんだとか。修験道は単なる宗教としてではなく、庄内の人々の生活に根付いていたことが伺えますね。

・なぜ“生まれかわりの旅”なの?

出羽三山のそれぞれの山は、「羽黒山=現在」「月山=過去」「湯殿山=未来」と見立てられ、この三山をめぐることは死と再生を辿る「生まれかわりの旅」として古より信仰をあつめてきました。

ちなみに、松尾芭蕉の「おくのほそ道」は松尾芭蕉が死と再生の世界を求めた旅について記したもので、出羽三山も旅の大きな目的の一つだったと言われています。

・“西の伊勢参り、東の奥参り”と言われていた所以は?

江戸時代中期には「西の伊勢参り、東の奥参り」と称され、多くの参拝者で賑わった出羽三山。

伊勢参りは、皇室のご先祖であり日本の総氏神の「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を祀っていることから、かねてより人気がありました。実は、「観光」という言葉は「光(=神様)を観る」からきており、伊勢神宮を参ることが日本の観光の原点だったとも言われているんだとか。

一方で出羽三山は、江戸時代初期に上述のとおり「おくのほそ道」に登場したことで徐々にクローズアップされるように。それに加え、伊勢神宮に祀られている「天照大御神」が太陽の神様であるため、その対である月の神様「月読命(つきよみのみこと)」が祀られる月山を含む出羽三山詣での人気に火がつきます。
その頃双方をお参りすることは“人生儀礼”とされており、一時は江戸からなんと15万人もの人々が歩いて出羽三山を参拝しに来たと言われています。

余談ですが、“奥参り”の“奥”は、湯殿山が出羽三山の「奥の院」と呼ばれていることからきているそうです。

・三山全部お参りしないとご利益はないの?

出羽三山にはそれぞれ山頂に神社が存在しますが、いくら峰続きとはいえ山を3つ登るのはなかなかの至難の技ですよね。

もちろん3つすべてお参りすることができれば一番良いのですが、難しい方もご安心ください!羽黒山頂には、羽黒山、月山、湯殿山の三神を合わせて祀る日本随一の大社殿「三神合祭殿」があり、ここをお参りすれば三神をお参りしたことになるとされているのだそうです。ここは三山の中でも唯一、冬の間も参拝可能なので、時期を選ばず足を運べるのがありがたいですね。

ちなみに、羽黒山頂には2446段の石段を登って行くのがおすすめですが、車や路線バスを使って行くこともできますよ。

出羽三山を参拝するときのルール

・お参りする順番は?

一般的には、最初は現世である羽黒山から始まり、月山、湯殿山の順に巡ることで生まれ変わりを果たすと言われています。逆ルートもあるそうですが、歩いて登る場合は体力的にかなりきついのでおすすめしないそうです…。

・写真撮影は可能?

羽黒山は出羽三山の中で最も村里に近く、オープンにお参りできる場所とされていたため、基本的には撮影可能です。しかし、月山神社と湯殿山神社の本宮は写真撮影NGなので、参拝する際はくれぐれもご注意ください!

ちなみに、昔は隠れて写真を撮る方もいたそうですが、その方々に事故や病気など悪いことが起きて写真を戻しにきた、ということが年に何回もあったんだとか…!

・どんな服装でお参りしたら良い?

一番のおすすめは、白装束。産着や死装束は白ですが、昔から白はお清め、魔除けの色とされ、白装束は“神様に対しての正装”と言われています。

しかし、白装束を持っている人は滅多にいないですよね。そんな時、白装束の代わりになるのが「おしめ」!といっても、赤ちゃんにつけるおしめではなく、首からかける形状になっている白い布のことです。

こちらもご自身でお持ちの方は少ないかと思いますが、羽黒山の麓にある随神門そばの社務所または山頂の出羽三山神社参集殿にて、500円でお借りすることが可能とのこと。ここでおしめを借りてから3つの山を回れば、より一層山のパワーをいただくことができそうですね!
 
もちろん、普通の服装で行くのがだめというわけではありませんので、ご安心くださいね。

吉住禰宜に聞く!おすすめの参拝の仕方

人によってはもちろんのこと、その時の心や体の状態によっても、どの山が好きかの好みが分かれるという出羽三山。出羽三山を知り尽くした吉住禰宜に、それぞれどんなポイントに注目しながら参拝してほしいか聞いてみました。

・羽黒山

とにかく時間を気にせず、五感で自然を感じながら石段を歩くことが大事。五重塔がどのように見えるかが、自分の心がどれだけ開いているかのバロメーターなんだとか。しっかりと心が開いていたら、五重塔が生きて見えるかも…。

・月山

月山を登って行くと、徐々に視野が広がっていく感覚があります。天気のいい日は美しい雲海に出会うことも。壮大な景色を見ながら、人間のちっぽけさを感じてみてください。

・湯殿山

湯殿山には社殿がなく、まさに自然崇拝そのもの。そのため、どこに感動したか、見えない気をどこに感じるかは人それぞれで、1回目と2回目で見え方が変わることもあります。是非何度も足を運んで、自分の軸を試してみてください。

12年に一度の“御縁年”とは

出羽三山では、それぞれの山に「御縁年」と呼ばれる特別な暦が設けられており、羽黒山は午歳、月山は卯歳、湯殿山は丑歳となっています。中でも湯殿山が開かれた歳であり、これを以て出羽三山が揃ったことから、“三山の御縁年”とされる丑歳。三山大神様の御神徳が最も高まると言われ、この年にお参りを果たすとなんと12年分の御利益を得られると伝えられているそうです!

12年分の御利益を得られる絶好のチャンス!これまで出羽三山に足を運んだことのない方もある方も、是非参拝してみてくださいね。


【施設情報】
施設名:出羽三山神社
場所:〒997-0292 山形県鶴岡市羽黒町手向字手向7
アクセス:
<バス利用>
・鶴岡駅から庄内交通バス羽黒山行きで50分(終点下車)
・随神門から山頂まで石段を登る場合、又、国宝羽黒山五重塔を拝観する場合は、同バスで「羽黒随神門」下車
<車利用>
・山形自動車道 庄内あさひICから山頂まで車で約40分、随神門まで約30分
・JR鶴岡駅から山頂まで車で約30分、随神門まで約20分
・庄内空港から山頂まで車で約45分、随神門まで約35分
電話:0235-62-2355
駐車場:あり
駐車料金:無料
時間:8:30〜16:30
定休日:年中無休
熊野古道ならぬ“羽黒古道”で古の参詣道を追体験

熊野古道ならぬ“羽黒古道”で古の参詣道を追体験

熊野古道はよくご存知の方も多いと思いますが、実は羽黒山にもかつて出羽三山巡りの表参道として賑わった“羽黒古道”が存在します。片道2時間弱のトレッキングコースなので、体力に自信のない方も気軽に挑戦できますよ♪
 
すでに出羽三山を制覇した!と言う方は、是非羽黒古道を歩きながら蜂子皇子ゆかりの史跡や山野草木に触れてみてください。

※羽黒古道トレッキングにはガイドの予約が必要です。(片道4,000円〜)詳細は庄内町役場 立川地域振興係(TEL:0234-56-2213)までお問い合わせください。

<ライター紹介>

地元ライター:國本 美鈴(くにもと みすず)
埼玉県深谷市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、都内の情報・通信系企業にて新規事業立ち上げやメディアの編成・PR等を担当したのち、2019年7月〜庄内に移住。現在、庄内町地域起こし協力隊観光PR担当として、イベントの企画やSNS等を活用した地域の情報発信などを行うほか、北庄内地域通訳案内士の資格も持つ。これまで訪問した国は45カ国という大の旅好き。庄内の魅力を県内外、そして海外の人にも発信すべく奮闘中!

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