絶品“酒田フレンチ”で思わず笑顔がこぼれるひと時を−「Restaurant Nico」

2021.03.30

こんにちは、地元ライターの國本です。

山形県庄内地域のグルメと言えば、海の幸、山の幸などがたっぷりの和食!というイメージを持っている方が多いですよね。もちろん私も以前はそうだったのですが、こちらに移住してからというもの、それらの食材を使った庄内の洋食の美味しさにすっかり魅了されてしまいました。

中でも酒田市は“酒田フレンチ”という言葉が存在するほどフレンチの名店が点在する街として知られており、シェフの技と地元食材の質の良さから生み出される“庄内・酒田ならではのフレンチ”を求めて、全国から多くの方が訪れます。

そこで今回は、酒田フレンチを代表するお店の一つ「Restaurant Nico」を初訪問。お店の様子からシェフのおすすめのお料理まで、じっくりレポートさせていただきます♪

Restaurant Nicoとは

酒田市の中心地からほど近く、多くのお店が立ち並ぶ亀ヶ崎エリア。その中で、まわりの賑やかさとは対照的に落ち着いた雰囲気を放っているのが「Restaurant Nico」です。

本格的なフレンチのお店にお邪魔する機会など滅多にない私。少々緊張しながらお店の扉を開けると、おしゃれでありつつも木のぬくもりを感じられるような、居心地の良い空間が広がります。

「店名の“Nico”は、笑顔(=ニコ)で食べてもらいたい、という想いから名付けました。」
そう語るのは、Nicoのオーナーシェフである太田舟二さんです。

祖父も父も、そして兄も料理人という料理人一家で育った太田シェフは、物心つく頃から自然と料理人を目指すように。高校卒業後に山形市でパンづくりの修行を始め、19歳から5年間、仙台のフレンチレストラン「ジュアン・レ・パン」で基礎を学びます。その後お店の紹介で2年間本場フランスにて修行を重ね、26歳の時に再び酒田へ。当時父の政宏さんが料理長を勤めていた「フランス風郷土料理 レストラン欅(けやき)」で働くことになりました。

欅でも料理を任されてはいたものの、次第に料理だけでなく椅子やテーブルなど総合的に自分のオリジナリティを出したいという想いが強くなり、32歳になった2008年(平成20年)に独立。今年でNicoをオープンしてから13年目になります。
今ではすっかり「酒田でフレンチといえば」と聞かれると真っ先に名前が挙がる人気店です。

席に着くと真っ先に目に飛び込んでくるのが花柄のお皿。
実は太田さん、お皿にもこだわりがあるそうで、山形の陶芸家さんの作品や、山形の伝統工芸品を含む多彩なアイテムを扱う寒河江の「GEA」の木の器など、各地に出向いて食器を調達されるんだとか。
素敵なお皿を前に、食べる前からテンションが上がります!

そして、いよいよお待ちかねのお食事。本日は、Nicoのスペシャルコース「KURO(税抜8,500円)」「SIRO(税抜12,000円)」(※)の中から、特別にシェフがチョイスしてくださったメニューをいただきました。

(※)スペシャルコースには別途サービス料5%が発生します。

最初にいただいたのは、庄内産カリフラワーのエスプーマ。エスプーマとはムースより柔らかい泡のことで、泡の下からは金華豚の生ハムとローストされたカリフラワーが現れ、上には白ワインとレモン汁でマリネされたいくらと、レッドオゼイユと呼ばれる酸味のあるハーブが乗っています。

一口食べると、カリフラワーの香ばしさとカリッとした食感が滑らかなムースと溶け合って、なんとも言えないハーモニーが口の中に広がります。マリネされたイクラはプチッとして歯ごたえがあり、「プチッ」「ふわっ」「カリッ」の3つの食感がなんとも楽しい!ほんのり漂うレモンの酸味がこれまた絶妙で、一口一口噛み締めながらいただきました。

次に登場したのは、まりも?!…ではなく、シェフのスペシャリテ・庄内産黒バイ貝のコロッケ。コロッケは竹墨パウダーで黒く染めてあり、パセリのソースとパウダー、そして周りにはクレソンが散りばめられています。他にはない見かけに、思わず写真を撮りたくなる一品です。
店員さんから「ナイフの刃先から入れると良いですよ」と教えていただき、その通りにやってみると…中からたっぷりのバターソースとバイ貝、そして庄内産の原木しいたけが溢れてきました!

こんなにも薄い衣の中にたっぷりとバターソースが入っているにも関わらず、衣はサクッとした仕上がりで、柔らかなバイ貝との食感のコントラストがこれまた楽しい。「一体どうやって作っているんですか?」と思わずシェフに聞いてしまうほど不思議でした(笑)。

バターは意外にもしつこくなくあっさりとした口当たりで、バジルソースをつけるとまたガラッと味が変わります。クレソンも一般的には少し香りが強く好き嫌いが分かれる野菜というイメージがありましたが、このクレソンは水耕栽培された品種ということで、香りがきつくなく料理を引き立ててくれます。

実は、Nicoで使われている食材は95%地元庄内産。それらのほとんどは、欅に勤めていた時代に知り合った農家さんや八百屋さんから仕入れているそうで、このクレソンも鶴岡の農家さんが育てたものなんだとか。

選び抜かれた食材の美味しさは言わずもがなですが、シェフはそこに一工夫“驚き”のある料理を提供することを意識していると言います。
「お客さんの半分は地元の方なので、素材の美味しさには慣れていらっしゃいます。だからこそ、ここでしか楽しめない驚きと美味しさを提供したいんです。」
この庄内産黒バイ貝のコロッケは、まさにそんなシェフの想いを象徴する一品だな、と感じました。

次にいただいたのは真鯛のヴァップール。ヴァップールとは蒸し物のことで、その下には庄内産のあやめ雪と呼ばれるかぶのローストが敷かれ、なばなを春菊のソースであえたものと菊の花びらが添えられています。その上からかかっているのは庄内浜でとれたあさりとゆずを使用した白ワイン風味のソースです。

しっとりフワフワの真鯛に、シャキシャキとしたなばな。そこにあさりの旨味が凝縮された濃厚かつ爽やかなソースが絡まります。そして驚いたのは、かぶの甘み。素材ごとに食べてももちろん美味しいですが、これらが口の中で合わさるとそれぞれの旨味がより際立ちます。

残ったソースは自家製カンパーニュにつけていただきましたが、これがまたよく合う!このカンパーニュの原料にはレーズンの種やライ麦が使われており、イーストは入れずに低温で長時間発酵させているため、黒糖のようなほんのりとした甘みが出るんだそう。もちろん、他のお料理のソースにもぴったりです。

メインディッシュの2品目は、庄内牛のフィレ肉のローストです。付け合わせに庄内産のごぼうと菊芋の素揚げ、そしてソースとして菊芋のピューレと、ごぼうを使用した赤ワインソースが添えられています。

まず驚くのはお肉の柔らかさ。口の中でサクッと切れたのち、やわらかくほぐれるような、これまで食べたことのない食感でした。一口目はソースではなく甘みのある酒田の塩を少量かけていただきましたが、お塩だけでも十分旨味があります。二口目は菊芋のピューレを合わせてパクリ。こちらはバターがよく効いていて、まろやかなお味に。そして言わずもがな、お肉といえば定番の赤ワインのソースも完璧にマッチします。

実は庄内牛はホルスタイン(乳牛)の雄を選抜して育てた牛で、かなり希少価値が高いお肉なんだとか。乳牛のお肉はあまり美味しくないというイメージがありましたが、そのイメージが根底から覆ると言っても過言ではない一皿です。

そして、これまた驚かされたのが菊芋の素揚げの柔らかさ。マッシュポテトのようにとろけて、一瞬で消えて無くなってしまいます。甘みもとても強く、付け合わせではなくそのまま一品になるほどの美味しさでした…!

最後は、締めのデザートとしてNico風モンブランとカモミールのアイスを。
Nico風モンブランは薄いシガレットの中にフワッフワの栗のエスプーマ(泡)とメレンゲのクッキーが入っているのですが、一口食べれば口の中はまさに栗そのもの!一方のカモミールのアイスはさっぱりとしていて冷涼感があり、添えられた庄内産ハトムギのキャラメリゼと一緒に食べると一気に香ばしさが加わります。
二つとも甘すぎずしつこくないので、一通りお料理をいただいた後でもするっと食べられてしまう、まさに“別腹”という言葉がぴったりのデザートでした。

ここまでコースの中から前菜2品、メイン2品、そしてデザートと計5品をいただきお腹も心もすっかり満たされましたが、実際のコースは7〜8品だそうなので、今回レポートさせていただいた以上に大満足なこと間違いなしです!

美味しいだけでなく一皿一皿に楽しさと驚きが散りばめられたお料理の数々を、是非一度味わってみてください♪

【店舗情報】
店名:Restaurant Nico
場所:〒998-0842山形県酒田市亀ケ崎3丁目7-2
アクセス:JR酒田駅から車で8分、日本海東北自動車道酒田ICから車で10分
電話:0234-28-9777
駐車場:あり
駐車料金:無料
時間:Lunch 11:30〜14:30(L.O.13:30)/Dinner 17:30〜21:30(L.O.20:30)
定休日:月曜日(祝日の場合は、火曜日)

※本記事は日本海美食旅(ガストロノミー)プレミアムレストラン参加店の取材記事です。

<ライター紹介>

地元ライター:國本 美鈴(くにもと みすず)
埼玉県深谷市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、都内の情報・通信系企業にて新規事業立ち上げやメディアの編成・PR等を担当したのち、2019年7月〜庄内に移住。現在、庄内町地域起こし協力隊観光PR担当として、イベントの企画やSNS等を活用した地域の情報発信などを行うほか、北庄内地域通訳案内士の資格も持つ。これまで訪問した国は45カ国という大の旅好き。庄内の魅力を県内外、そして海外の人にも発信すべく奮闘中!

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