海も山も生き物も!鳥海山麓の注目エリアをぐるっと大冒険!<後編(酒田)>

2021.08.31

山形県と秋田県の県境にあり、標高2,236メートルを誇る鳥海山。「出羽富士」とも呼ばれるこの山は古くから、そして現在でも、地元の人々に親しまれている存在です。また登山客にも非常に人気が高く、7月1日の山開きから10月頃まで多くの人が訪れています。

また、鳥海山は山形県唯一の有人離島である飛島と共に「鳥海山・飛島ジオパーク」として2016年に日本ジオパークに認定された、自然の宝庫でもあります。全体テーマは「日本海と大地がつくる水と命の循環」、エリア毎では「ガサガサ、ぽこぽこ たぐいまれな湧水の郷」が遊佐、「イヌワシが舞う多彩な大地と自然」が酒田となっています。聞くだけでワクワクしてくるテーマだと思いませんか?

広大な鳥海山麓エリアは、登山はもちろん、ドライブや自然観察など様々な楽しみ方ができる場所。今回は、遊佐エリアと酒田エリアのスポットにドライブがてら行ってきました!

【酒田】水際で涼を得る!ご利益は開運出世といわれる不動の滝

次は酒田の鳥海山麓エリアのスポットをいくつかご紹介したいと思います。

まず向かったのは、酒田市八幡エリアにある「御滝神社 不動の滝」。酒田市中心部から車で30分弱の下黒川にあるこの滝は、開運出世のご利益があるともいわれています。

庄内エリアにはいくつも有名な滝が存在していますが、私が2018年に移住してきた後に初めて訪れた滝が何を隠そうこの「不動の滝」だったため、今回の再訪に何だか不思議な縁を感じてしまいます。

下黒川集落に入って県道366号を道なりにしばらく進んでいくと、道の左側に「御滝神社」という看板が現れます。そこを左折し坂道を登っていくと、目指す不動の滝に到着します。

ちなみに酒田方面から不動の滝に向かう場合、下黒川集落に入るとこれまた道の左側に面白い看板がありますので、ぜひそれもチェックしてみてください。

御滝神社周辺は虫の声、そしてごうごうとなだれ落ちる滝の音しか聞こえない静謐な空間。真夏ではあるものの、心なしかひんやりした空気を感じるのは滝の存在ゆえでしょうか。

鳥居をくぐり、お参りをすませてから裏手にある滝へ。

この滝の落差は約15m。すぐ近くまで行くことができますが、地面が濡れているのでぜひ歩きやすい靴で行ってくださいね。しばし滝を眺め、開運出世のご利益を願いながら深呼吸をして、次なる目的地の「鳥海イヌワシみらい館」に向かうことにします。

【酒田】ちょっと寄り道♪数河ノ池は庄内でも珍しい人造湖

次の目的地である鳥海イヌワシみらい館に向かう前に、「数河ノ池(すごのいけ)」にも足をのばしてみました。
数河ノ池は、大正5年に灌漑用のため池として完成された人造湖。酒田に人造湖があったなんて、皆さん知っていました? 私は知りませんでした……!

酒田市を背に再び県道366号を進んでいくと、確かに左手に「数河ノ池」の看板が!この道は他の滝や鳥海山スポットを訪れるのに何度も通っていたはずなのに、その時は全く気付いていなかったようです。

看板の脇道を入り、ナビを頼りに山道をひたすら進んでいくと、「たこつき唄記念の碑」という看板に行きつくと思います。その向かいには、恐らく道案内板だったと思われる看板(?)が……

「もしやここが数河ノ池入口?」と思い下り坂をおりていくと、見事正解でした!

最大水深10mという数河ノ池は、池というより湖のような雄大さ。周辺には、池をぐるりと巡るように敷設された遊歩道、木製展望台、春にはミズバショウが咲き乱れる湿生植物園があったり、秋には紅葉狩りができるなど、池の見学だけではなく散策も楽しめそうです。

池の横の道を進んでいくと、まず現れるのが木製展望台。池にせり出した形になっており、特に2階からの眺めは抜群! ……ですが、2階に上がる階段は各ステップの隙間から真下の景色が視界に入るため、高いところが苦手な方はご注意ください。

数河ノ池の入口に近いあたりには、かなりの台数が停められそうな駐車場もあります。

また駐車場にはお手洗いも設置されているので、長時間の見学でも安心ですよね。ただ数河ノ池付近に自動販売機やお店がないため、特に夏場に訪れる時は事前に水分を準備していくことをおすすめします。

【酒田】猛禽類の宝庫「鳥海イヌワシみらい館」は遊べる・学べる大満足スポット!

水辺を離れたら今度は一路山の方へ。次に目指すは「猛禽類保護センター」、愛称「鳥海イヌワシみらい館」です。

「猛禽類保護センター」はその名の通り、食物連鎖の頂点に位置するタカやワシといった大型猛禽類、特にイヌワシを初めとした希少な種の研究や保護増殖、普及啓発を目的とした施設。日本の天然記念物に指定されているイヌワシは酒田市の「市の鳥」でもあるのですが、それは鳥海山麓に生息しているから。

酒田の鳥海山麓エリアに行くなら、猛禽類保護センターはぜひルートに入れてほしい場所。近くには鳥海高原家族旅行村や温泉のある鳥海山荘もあるので、宿泊を兼ねて訪れてみるのもいいかもしれません。

センターに入ると、まず勇猛なイヌワシが出迎えてくれます。そしてふと天井を見上げれば、ハシブトガラスとイヌワシのはく製、足元には成長したオスとメスのイヌワシのステッカーが。

「実物大です」と注釈がついていますが、実際に目にしたらその大きさにびっくりすること間違いなし。特に翼を拡げた姿は2mを超える、まさに大型猛禽類という名にふさわしいサイズです。

ところで、「希少な種の研究や保護増殖、普及啓発を目的とした施設」なんて聞くと、学術的な展示物が並んだ難しい場所なのかなと思ってしまいませんか?

しかしこの猛禽類保護センターは、子どもでも遊びながら楽しく学んでいけるような工夫が随所に仕込まれています。しかも何と、入場無料。展示物やアトラクションの充実ぶりは、「これ、無料でいいんですか!?」と叫びたくなってしまうほど。

例えば「ワッシーくんスタンプラリー」。見学エリアの各所にあるスタンプを押し、マスコットキャラクターである「ワッシーくん」を完成させれば、ジオパークやワッシーくんに関するグッズがもらえます。しかも子どもだけでなく大人も参加OKとのこと。せっかくなので私もスタンプ台紙片手に見学をすることにしました。

また見学時にオススメしたいのが、センターの職員による案内。団体の場合は事前申し込みが必要ですが、個人であれば繁忙期などのタイミングを除き当日お願いすることができます。各種展示にも詳しい説明が書かれていますが、エキスパートの方と一緒だと楽しさが倍増すること間違いなしです。

展示室は「鳥海山の自然」・「出会い」・「知る」・「学ぶ」・「環境」・「守る」の6つのエリアに分かれており、まずは「鳥海山の自然」から見学が始まるのですが、そこには何やらコイン落としのようにドングリを落とす装置、そしてボールを転がして遊べるセットが。

何でもこれらは、職員の方の手作りなんだそう。

コイン落としの方は、ドングリが増えることでイヌワシの数も増えること、そしてボール転がしの方は木の伐採が行われることで生態系にどんな変化が起きるかを視覚的に楽しめるように作られています。

展示室の中は、豊富な写真やはく製、そして職員の方手作りのアトラクションであふれています。

猛禽類の脚の形態がマジックハンドになっており、どちらが物を掴みやすいかを体感できる「イヌワシVSミサゴ」は、かなり必死に遊んで(学んで?)しまいました。

日本国内の山、野、水辺に生息する猛禽類に関する説明を抜けると、海外に生息する猛禽類に関するパネル、そしてたくさんのはく製展示があります。片翼を拡げるように展示された猛禽類は、小さいサイズのものでさえかなりの迫力。

見学エリア終盤には「はてなボックス」という3種の箱が。

中にはイヌワシのエサとなる動物に関係する何かが入っていて、両側から手を入れてそれが何かを当てる……というクイズボックスですが、これがかなりスリリング。はてなははてなのままにしておくので、気になる方はぜひ現地で両手をボックスに入れてみてくださいね。

職員の方の説明を聞きながらゆっくりと一周して大体30分ほど。見学中にしっかりとスタンプを集めたため、見事プレゼントを手に入れることができました。

私が選んだのは、猛禽類保護センターのマスコットキャラクター「ワッシーくん」がプリントされたエコバッグ。きりっとした目とニヒルなほほ笑みがとても可愛いと思いませんか?

ちなみにこのワッシーくん、入口近くの部屋の中に等身大(?)の着ぐるみもいるので、現地を訪れたらぜひ一緒に記念写真を撮ってみてくださいね。

帰り際、センター出入り口近くのイヌワシ大明神でおみくじを引いてみると、嬉しいことにイヌワシがプリントされた大吉が出現。「すべてがうまくいくでしょう!」というフレーズに気を良くしながら見学を終了しました。

是非鳥海山の豊かな自然と生態系を間近に感じてみてください。

【酒田】鳥海高原ラインをひたすらのぼり、湯の台口から鳥海山頂へ

猛禽類保護センターから県道368号線に出てひたすら上って車道終点までいくと、酒田側の鳥海登山口である湯の台口に到着します。

湯の台口は鳥海山頂への最短コースというだけあって登山のハイシーズンはかなりの人が訪れるものの、終点には45台分、終点手前のエリアには75台分の場所が準備されているため、駐車スペースの心配をしなくても良いのが嬉しいところ。何しろ湯の台口が位置するのは標高1,200m。そこまでのぼったのに駐車できずに下山……というのは切ないですよね。

そして、さすが標高1,200m! と思うのは、真夏であっても雪が残っている点。さすがに残雪量は多くはないものの、下界は気温35度を超えているというのに目の前に雪があるというのは何だか不思議な気分でした。

庄内地方の人々の暮らしに根付く鳥海山。逆に言うと、鳥海山がなければ庄内の人の生活は成り立たないといえるほど、日々の生活に深くかかわっています。

ぜひドライブで、散策で、登山で、鳥海山を訪れてみてください。自然あふれる豊かな庄内地方の暮らしを身近に感じることができるに違いありません。


【酒田エリア】

■御滝神社 不動の滝
所在地:山形県酒田市下黒川
問い合わせ先:0234-64-3115(酒田市八幡総合支所)
HP:https://mokkedano.net/spot/30524

■数河ノ池
所在地:酒田市升田
問い合わせ先:0234-64-3115(酒田市八幡総合支所)

■猛禽類保護センター(鳥海イヌワシみらい館)
住所:山形県酒田市草津字湯ノ台71-1
電話番号:0234-64-4681
FAX:0234-64-4683
E-mail : moukin@raptor-c.com
開館時間:9:00~16:30
料金:入場無料
HP:http://www.raptor-c.com/